ネット上の名誉毀損についての裁判例(1)

最三判平成24年3月23日判タ1369号121頁

事案の概要

原告は地方新聞社とその従業員であり,被告はフリーのジャーナリストである。

被告は,自分のサイトで「臨時ニュース」と題する記事を掲載した。その記事には,原告の従業員らは,ある販売店の所長に対し,翌日から新聞の取引を中止すると伝えたうえ,「その上で明日の朝刊に折り込む予定になっていたチラシ類を持ち去った。これは窃盗に該当し,刑事告訴の対象になる。」との記載があった。原告は,この記載部分が名誉毀損にあたるとして,訴えを起こした。

争点

「その上で明日の朝刊に折り込む予定になっていたチラシ類を持ち去った。これは窃盗に該当し,刑事告訴の対象になる。」という記載部分が名誉毀損にあたるか否か

原審の判断

原審である東京高等裁判所は,次のように上記記載部分は名誉毀損にはあたらないと判断した。なお,()は引用者注である。

第2文(中略)は,第1文で摘示した事実関係を前提とした被上告人(=被告)の法的見解を表明するもので,本件記事を閲読した一般の閲覧者は,被上告人(=被告)が突然の取引中止の通告等を批判する趣旨で殊更に誇張した法的評価を加えていると受け止めるのが自然であって,直ちにX2(=原告の従業員)らが現に「窃盗」に該当する行為を行ったものと理解する可能性は乏しかったから,本件記載部分によって上告人(原告)らの社会的評価が低下したということはできない。

最高裁の判断

これに対して,最高裁は,次のように上記記載部分は名誉毀損にあたると判断した。なお,()は引用者注である。

本件記載部分は,第1文と第2文があいまって,上告人(=原告)会社の業務の一環として本件販売店を訪問したX2(=原告の従業員)らが,本件販売店の所長が所持していた折込チラシを同人の了解なくして持ち去った旨の事実を摘示するものと理解されるのが通常であるから,本件記事は,上告人らの社会的評価を低下させることが明らかである。