ネットオークションについての裁判例(2)

東京地判平成23年2月16日LLI/DB判例秘書

事案の概要

原告:子供服等販売業者

被告:主婦

被告は,原告がYahoo!オークションに出品していた子供服を気に入り,購入を決めた。その子供服のオークション開始日時は2月3日21時4分で,終了日時は2月10日21時9分であった。被告は購入に先立ち,原告に縫製状況などを質問したが,その回答は2月10日17時15分以降になされたので,被告は回答が遅いと感じた。被告は,回答に先立ち2月10日10時49分に,15,980円で入札した。しかし,オークション終了時刻直前の2月10日21時2分に,16,480円で入札した人物がこの子供服を落札した。ところが,同じ子供服が40分後の2月10日21時49分に原告によって出品され,被告が15,980円で落札した。

このような状況から,被告は価格の引き上げのための入札がなされたのではないかと疑いをもつに至った。その後,被告は,

ヤフーオークションの評価コメント欄に,原告に対し「悪い出品者」であると評価をした上で,落札者からのコメントとして「落札前から質問に答え無い等,不安を感じる取引となり,入札すると金額が上がりました。引き上げ行為をなさっているのでは・・・」という書き込み(本件書き込み)をした。

これに対して,原告は,次のように反論した。

ヤフーオークションの評価コメント欄に「しかし頂いたコメントに記載のある「入札すると金額が上がりました。引き上げ行為をなさっているのでは・・・」という部分についてですがオークションの落札画面を見て頂ければ一目瞭然におわかり頂けるかと存じますが」「この方はオークションの開始価格で落札しておりこの方以外の入札者がおりません。したがって「入札すると金額が上がりました。引き上げ行為をなさっているのでは・・・」という事は有り得ない事になります」などの反論を掲載した

その後,被告は,原告の代理人弁護士から損害賠償の請求を受けたことから,「悪い出品者」を「良い出品者」に変更し,

「質問の件は不安を感じましたが,私が誤って引き上げ行為という評価をしたことをお詫び致します。営業妨害,名誉棄損に相応する評価を記載致しました事,深く反省しております。色々お気遣い頂き,有難うございました。」「これからも良い商品をご出品下さい。又利用させて頂きます。ご迷惑をお掛けし申し訳御座いませんでした。」との謝罪のコメントを行った。

しかし,原告は,被告の書き込みは名誉毀損・業務妨害にあたるとして,損害賠償として165万円(弁護士費用15万円を含む)の支払を求めて提訴した。

争点

被告の書き込みが名誉毀損・業務妨害行為にあたるか

裁判所の判断

裁判所は,次のような理由を挙げて,原告の書き込みが名誉毀損・業務妨害行為にはあたらないとした。

  • 一連の流れから,被告が価格の引き上げのための入札がなされたと疑いをもつことはあながち不合理ではないこと
  • 被告のコメントは「断定的・糾弾的なものではなく,意見表明による疑問を提起するに止めているものであること」
  • 被告は素直に謝罪していること
  • 被告に意図的に業務妨害を図った事実もないこと
  • 被告の書き込みがYahoo!オークションガイドライン5の「社会通念上相当とみなされる範囲」のコメントであることなど