ネット上の名誉毀損についての裁判例(2)

最一決平成22年3月15日刑集64巻2号1頁

事案の概要

被告人は,フランチャイズによる飲食店「ラーメン甲」の加盟店等の募集及び経営指導等を業とする乙社の名誉を毀損しようと企てた。

そこで,被告人は,平成14年10月18日ころから同年11月12日ころまでの間,自らが開設した「丙観察会 逝き逝きて丙」と題するホームページ内のトップページにおいて,「インチキFC甲粉砕!」,「貴方が『甲』で食事をすると,飲食代の4~5%がカルト集団の収入になります。」などと,同社がカルト集団である旨の虚偽の内容を記載した文章を掲載した。

また,そのホームページの乙社の会社説明会の広告を引用したページにおいて,その下段に「おいおい,まともな企業のふりしてんじゃねえよ。この手の就職情報誌には,給料のサバ読みはよくあることですが,ここまで実態とかけ離れているのも珍しい。教祖が宗教法人のブローカーをやっていた右翼系カルト『丙』が母体だということも,FC店を開くときに,自宅を無理矢理担保に入れられるなんてことも,この広告には全く書かれず,『店が持てる,店長になれる』と調子のいいことばかり。」と,同社が虚偽の広告をしているがごとき内容を記載した文章等を掲載し続けた。

被告人は一審で無罪となったが,控訴審はその判決を破棄し,罰金30万円の逆転判決を受けた。

ポイント

摘示した事実が真実であると誤信したことに相当な理由があるか否かに判断において,インターネットにおける名誉毀損の場合には,他の方法による表現行為より緩やかな基準によるか否か

最高裁の判断

最高裁は,次のような理由を挙げて,他の表現手段を利用した場合と同様の基準によるとした。

  • インターネット上の情報であっても,閲覧者が信頼性の低い情報として受け取るとは限らず,他の表現手段を利用した場合と区別すべき根拠がないこと
  • 「インターネット上に載せた情報は,不特定多数の(中略)者が瞬時に閲覧可能であり,これによる名誉毀損の被害は時として深刻なものとなり得ること」
  • 「一度損なわれた名誉の回復は容易ではなく,インターネット上での反論によって十分にその回復が図られる保証があるわけでもないことなど」